Palette Ring 創作號 01
Palette Ring 創作號 01

シンガポール同人イベント: Doujin Market

訪、著、譯:Pinosuke   画像提供: インタビュイー



はじめに
2014年に創設された同人誌即売会-Doujima-は、シンガポール最大の同人イベントでシンガポールで初めて同人サークルを中心とした数少ないイベントの一つでもある。地元の同人作家に作品をアピールする場を提供することを目的として創設され、当初は参加サークル数22、来場者1,000人程度だったが、5年目にはサークル数300以上、来場者2万人以上という規模に急成長してきた。今回は、I.O.E.A. (International Otaku Expo Association)のメンバーイベントでもあるDoujimaの創設者、JasonさんとCharlotteさんに話を聞いた。

( J﹕Jason、C﹕Charlotte )

Q: 香港の読者に自己紹介をお願いします。

J&C: こんにちは!Doujimaの主催者で、Neo Tokyo Project所属のジェイソンとシャーロットです。Doujima以外にも、コスプレイベントやダンジョンズ&ドラゴンズのようなTRPG(テーブルトークRPG)イベントも開催しています。

スタート地点

Q:Doujimaを創設したきっかけは?

J: 何年か前、ベテランのクリエーターをゲストスピーカーとして招いたライターズフェスティバルがあったんです。そこで行われた座談会で、そのひとりが同人活動についての考えを聞かれましたが、驚くことに、そんなベテランクリエーターが、同人活動を「盗作」だと定義し、その上同人作家を「才能のない」人だとまで言っていたのです。

C: それから、若手の同人作家は美大生が多いですが、美大では二次創作は芸術ではない、実力のない人しか作らないなどと言って、二次創作を見下す雰囲気があるんです。別にそういうわけではないと思いますが。

J&C: このような誤解があることには、本当に悲しい気持ちになりました。同人文化に対する間違ったイメージがまかり通っているだけではなく、若手の同人作家が自分の好きなことを自由に出来ない状況にいました。しかも、当時主流の出版物より売れている同人作家もいたのです。このような誤解を解き、クリエイターに安心して創作できる場を提供しようという目標で、私たちはDoujimaの主催に一生懸命取り組みました。私たちは、「Make it big!見返してやるぞ!」という思いでした。



主催者の苦労と課題

Q: Doujimaの主催を始めてから、どのような困難や問題がありました?どのように乗り越えてきましたか。

J&C: まず一番大きいのはいつも財政です。欧米ほどではないけど、シンガポールは会場のレンタル料金が高いです。金関連でもうひとつの課題は、スポンサー探しです。スポンサーがみんな同人創作に関心があるわけではないので、たいていが同人作家コミュニティよりも自分たちに対する利益を先に考えているわけです。もちろん当たり前のことですが。最近では二次創作や同人コミュニティに理解を示し、積極的に応援してくれるスポンサーが増えている傾向ですが、それはとても良いことだと思っています。

J: 「資金はどこから来ているのか」とよく聞かれますが、趣味でまかなっているといつも言っています。マジック:ザ・ギャザリングのコレクションとか、小道具制作やコスプレタレントマネジメントといった企業スポンサーとの仕事とかで、いろいろありますが……

C: あとは自腹を切ってですね。もっと一般の方にイベントを楽しんでもらいたいと思っているので、初回から今でも「入場無料」にこだわっています。 それから、嬉しい悲鳴ではありますが、イベントの人気さに追いつけないという問題もあります。たったの数年で千人規模から2万人を超える規模まで急成長してきたイベントなので、混雑対策としてのスタッフ配置やボランティア指導は、常に課題としてあります。

J: 来場者が増えると混雑があるだけでなく、参加者一人ひとりのマナーという問題も出てきます。私たちは、イベントのSNSや会場内でマナーのガイドラインを掲載し、こうしてはいけないよという注意喚起を行っています。参加者がお互いを尊重し、全員楽しめるイベントにするよう心がけています。




イベント開催に最適!?シンガポールと香港

Q: シンガポール/香港開催のイベントは、他の地域と比べて何が違うと思いますか。

J&C: シンガポールのイベントに参加するのはアメリカやオーストラリアなどと比べて結構違いますね。会場までは鉄道で長時間移動したり車を借りたりしなければ行けないとか、会場近くで宿を確保しなければならないのようなことは、シンガポールの同人作家にはまず想像出来ないでしょう。香港の場合も似ていますよね。

J: クリエーターや出展者からすれば、必要なサービスが大体そろってて、街中の移動も楽だからずっと安心です。例えばMRT(Mass Rapid Transit=シンガポールの地下鉄)のような充実した交通機関があったり、印刷会社が都内にあって、会場の隣に同人誌専門の印刷会社まであったり、商品が無事にお客様の手に届くための宅配業者があったり。このような「何でもある」の環境があるから、クリエーターは作品制作やイベントでの出展に専念できますが、こういうところは欧米のイベントより強いと思います。しかもアジアだということは淘宝(タオバオ)のメーカーさんたちに近いということで、、配送料も欧米でより安く、配送時間も短い。シンガポールや香港のイベントで、同人グッズの値段がお手頃なのも、そのためかもしれない。実際、「シンガポールで出展していると、香港みたいな居心地よさがある」と香港のクリエーターさんたちに言われたこともあります。

C: メトロの名前まで似てますよね。シンガポールがMRTで香港がMTRで。




イベント開催の心得

Q: イベント主催を考えているけど、どこから始めればいいかわからない人にアドバイスをください。

J&C: まずは、自治体が定めたルールを徹底的に知ることです。条例や規則をよく覚え、イベントのライセンスや許可証など、必要な書類をきちんと揃えます。特に、コロナにかかわる措置などに注意してください。

二番目は、あらゆる可能性を予想して対策を立てておくことです。失敗しそうなところは絶対に失敗すると想定してください。安全対策、避難対策など、イベント当日に起こりうるさまざまな可能性に対して、十分に対策を考えてください。

三番目は、SNSで発信しているイベントの情報の管理を徹底することです。来場者がすぐアクセスできるように、イベントに関するすべての情報を一箇所にまとめて掲載するといいです。フェイスブックとインスタでの情報が違ってたら駄目です。また、スタッフの一人ひとりには同じ情報を共有するよう注意してください。スタッフが間違った情報を広めたらいけませんから。

四番目は、スタッフを大事にすることです。イベント前はスタッフを指導し、当日は休憩時間やイベントを回る時間を設けて、それから水分補給しているか確認するなど、スタッフに優しくしてあげましょう。また、適材適所の人員配置にも注意を。それぞれのスタッフのスキルや性格を考えたうえで役職に配置しましょう。例えば、コミュニケーションが苦手な人に受付を頼むと、その人も来場者も大変なので、やめた方がいいです。

スポンサー向けの企画書、チェックリスト、忘れ物の取り扱い、名札、マニュアルなど、他にもいろいろありますが、最も大事なのは、失敗から学ぶことです。失敗を経験に変えて、次は同じ失敗を繰り返さないように気を付けしましょう。

香港の皆様へ

Q: 参加サークル向けの取り組みを教えてください。

J&C: この数年、シンガポールに本社を置くゲーム会社、クリエーティブアート団体、それからエンターテインメント企業が急増しています。スポンサーやコラボレーションの機会も増えているし、就職の話にまでつながったりするので、イベントにとってもクリエイターにとっても大きなチャンスだと考えています。この盛り上がりをDoujimaでも垣間見ることが出来ます。初日の夜にパーティーがあって、そこでクリエーターたちが交流し、自分の作品を交換などしてネットワーキングし、さらに、スポンサーや業界のキーパーソンに自己PR出来ますが、我々も参加者たちも毎年それを楽しみにしています。

Doujimaのもうひとつの特徴は、ブースの割り当ては抽選で決まっていることです。ジャンル別に割り当てた方が普通かもしれませんが、抽選だと、ある一か所が混雑するということも起こりにくくなって、参加サークルがみんな平等にスポットライトを当てられると考えているからです。また、サークルの配置がランダムだと来場者ももっと会場を回ってくれるだろうと思っています。。

海外から参加するサークルには、同じ地域のサークルと一緒にしたり、説明係やトイレに行っている間の店番係のスタッフを配置したりするなど、いろいろ配慮してサポートしています。困ったことがあれば、いつでも声をかけてください。

Q: 香港の同人コミュニティーに一言ください。

J&C: 今後、入国制限が緩和されればDoujimaに遊びや出展しに来てください!待ってますよ。近いうちに香港にもまた遊びに行きたいです!

C: チョンファン食べたいよ~。
J: 飲茶もしたいよ~。




最後に
Doujimaの主催で培った経験と見解をシェアしてくださったジェイソンさんとシャーロットさんと、私にゲストジャーナリストとして他地域のイベントへ関心を呼び起こす機会を与えてくださったPalette Ring主催者の皆さんに心より御礼申し上げます。パンデミック下でも開催を諦めなかった両イベントの主催者たちにお疲れ様です。出展者としてでも来場者としてでも、入国制限が緩和されたらぜひいろいろなイベントに行ってみましょう。
この記事の作成にご協力くださったLevin、Angelo、Secmoonに御礼申し上げます。
このインタビューの全文は、Palette Ringのオフィシャルサイトに掲載される予定です。

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